政府の打ち出した「働き方改革」により、行き過ぎた残業や休日出勤が是正され、日本人の勤務時間が徐々に短くなってきています。それに伴い、隙間時間でちょっとした投資や資産運用、副業を始めてみようとするサラリーマンは増えています。
その中の1つの選択肢として「海外FX」があります。
しかし、新たに海外FXを始めるとなると、様々な疑問や課題が浮かび上がってくるでしょう。特に、税金の問題が非常にネックになってきます。
今回は、海外FXで稼いだ利益にかかる税金や納税手段、お得な節税方法について見ていきたいと思います。
海外FXにおける納税の義務
まず結論から言うと、日本のサラリーマンや会社員が海外FXを用いて利益を出した際、当然に納税の義務が発生します。
基本的に日本の税制ではすべての所得が課税の対象なので、海外FXで得た利益ももちろんその範囲内となります。
しかし、もし海外に出張や転勤で1年以上住むのであれば、日本の居住者とはみなされないので、転勤先の国の税制に従い税金を納めることとなります。
海外FXでの税金の詳細・内訳
海外FXで日本のサラリーマンや会社員が利益を出した際に課される税金は2種類あります。所得税と住民税です。
そして、「申告分離課税」を採用している国内FXとは異なり、海外FXでは「総合課税」が用いられています。
「申告分離課税」とは、それぞれの所得ごとに税額を計算する課税方法です。
「総合課税」は、様々な種類の所得をひとつにまとめて税額を計算する課税方法です。
事業所得や給与所得、雑所得などが含まれ、海外FXで得た利益は雑所得の一部として計上されます。
なので、日本のサラリーマンや会社員が海外FXで利益を得た場合、
となり、総所得によって税額が計算されることになります。
続いて税率についてです。所得税の税率は以下の通りです。
所得税率一覧
課税される所得金額(A) | 所得税率(B) | 控除額(C) | 税額=(A)×(B)-(C) |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 | (A)×5%-0円 |
195~330万円以下 | 10% | 97,500円 | (A)×10%-97,500円 |
330~695万円以下 | 20% | 427,500円 | (A)×20%-427,500円 |
695~900万円以下 | 23% | 636,000円 | (A)×23%-636,000円 |
900~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 | (A)×33%-1,536,000円 |
1800~4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 | (A)×40%-2,796,000円 |
4,000万円~ | 45% | 4,796,000円 | (A)×45%-4,796,000円 |
住民税率一覧
住民税 | 道府県民税 | 均等割 | 1,000円 |
---|---|---|---|
所得割 | 4% | ||
市区町村民税 | 均等割 | 3,000円 | |
所得割 | 6% |
「均等割」とは、所得税と異なる定額の課税方法のことです。
海外FXでの確定申告について
サラリーマンが会社からもらう給与に課せられる所得税などについては、会社が代わりに納税を行ってくれます。これが俗に言う「源泉徴収」です。
しかし、海外FXで得た利益については会社が納税を行ってくれないので、自ら納税しなければいけません。
そこで行うのが「確定申告」です。
確定申告とは、年始から年末にかけて課税期間とし、その期間の収入や支出などから総所得をはじき出した申告書を翌年の2月16日から3月15日(カレンダーによってずれるケースもあり)までの申告期間のうちに提出し、納めるべき税額を決めることを指します。
会社からの給与については会社が納税を行ってくれるとはいえ、海外FXは総合課税に含まれます。
そのため、会社からの給与を含めすべての所得を自ら確定申告しなければいけません。
会社からの給料に関しては源泉徴収票をもらい、海外FXに関しては収支や領収書をまとめ、確定申告に行くようにしましょう。
源泉徴収と確定申告は重複してもかまいません。
具体的な納税の手順としては、
- 会社から源泉徴収票をもらう
- 海外FX業者から年間収支データをもらう
- 海外FXで利用した経費を、領収書を用いてまとめる
- もしなにかしらの控除があるなら、それを証明する明細書や領収書もそろえる
- 税務署(もしくは国税庁のサイト)で確定申告書を作成
- ネットもしくは書面で確定申告書を提出
- 3月15日(ずれるケース有)までに納税
となります。
また、納付方法は
- 振替納税を用いて納付
- e-Taxを用いて納付
- クレジットカードを用いて納付
- QRコードを用いてコンビニエンスストアで納付
- 金融機関や税務署の窓口で現金納付
など様々です。
手早く済ませたいなら、e-Taxやクレジットカードでの納付がおすすめです。そして、確定申告で使用した領収書などはきちんと保管しておく必要があります。
- 青色申告の場合…7年間
- 白色申告の場合…5年間
は最低でも保管しておきましょう。のちのち必要になる時がくるかもしれません。
青色申告とは、複式簿記を用いて帳簿を行った際の申告方法です。単式簿記を用いる白色申告よりも少し手間がかかりますが、特別控除を最大65万円受けることができるので、大きな節税効果がありお得です。節税については、事項でより詳しく述べていきます。
海外FXでの節税方法
海外FXでの節税方法も、基本的に他の事業での節税方法と変りません。
代表的な方法は、
- 経費を増やして利益を減らす
- 控除を増やす
この2つです。
まず、経費を減らす方法について述べていきます。
海外FXにおいて、経費として認められるものは、
- FXについての情報を得るために購入した書籍やDVD代
- FXについての情報を得るために参加したセミナー代
- FXについての情報を得るために登録したサイトやメルマガ代
- FXにおける取引手数料
- Wi-Fiなどの回線料金
- PC周辺機器
- 新聞や文具、事務用品
- MT4で利用する有料サービスの購入代金
- FXトレードのために利用している家の家賃やその家の家具家電
- FXトレード仲間との会食や接待費
- FXトレードのための送金手数料
- FXトレードのための海外への交通費
などがあります。場合によってはこれらに該当しても経費として認められない場合があるので、税理士や会計士にその都度相談するのがよいでしょう。
次に、控除を増やす方法について述べていきます。
サラリーマンや会社員の方が利用することができる控除には、
- ふるさと納税
- iDeCo
- 特定支出控除
- 扶養控除
などがあります。
まずはふるさと納税についてです。
最近話題の「ふるさと納税」。地域の特産品がもらえるというオプションもあり、始める人が増えてきています。ふるさと納税は、納税といっても寄付扱いとなるので、寄付額から2,000円を控除した額が所得税から割り引かれます。
毎月の積立金により、60歳以降に一時金を受け取れるという仕組みの個人型確定拠出年金「iDeCo」では、積み立てるお金は所得控除の対象としてみなされるので、所得税を節約でき、お得です。
特定支出控除とは、業務のための経費に計上される特定支出の合計額が、その年の給与所得控除額の半分を超えた場合、超えた金額分を所得金額から差し引くといった制度です。
最後に扶養控除についてです。給与収入が103万円以下の家族に仕送りしている場合、その家族の方は扶養控除の対象となるので、所得税を抑えることができます。
海外FXは国内FXに比べるとリターンが大きいため、やってみよう!というサラリーマンの方も多いと思います。
今回、海外FXでの税金について理解してもらい、海外FXをより身近のものに感じてもらえたらありがたいです。